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製品紹介①「大吟醸 斗瓶囲い」が 高いワケ。

もそも「斗瓶とびんとは。
1斗(=18ℓ)入る大きなガラス瓶です。1升瓶 ×10本分の 大きさです。

1合 = 180ml = 0.18ℓ
1升 = 1,800ml = 1.8ℓ
1斗 = 18,000ml = 18ℓ

搾れたお酒を「斗瓶」「囲う(別採りする、の意)ことが「斗瓶囲い」の語源です。



ではなぜ 別に採る必要があるのか。
たとえば お茶に「1番煎じ」「2番煎じ」「出涸らし」があり、それぞれで味が異なるように、
お酒を搾る時にも、「あらばしり」「中取り」「責め」と呼ばれる部分があり、
それぞれに味わいが異なります。


を搾る時の話ですが、(ふね)と呼ばれる大きな搾り容器があります。
タンクの中で醗酵が終わった醪を「搾り袋」と呼ばれる 細長い布袋に入れて 槽の中に積み重ねていき、
最終的に上から圧を掛けてお酒を搾り採るわけです。

の時、最初は 圧を掛けなくても自然に流下してくる「あらばしり」と呼ばれる部分があります。
あらばしりが出なくなると いよいよ圧を掛けて搾ります。この時出てくるのが「中取り」です。
搾りも終盤に差し掛かると、「積み替え」といって槽の中に積み上げた搾り袋を積み替える作業を行い、
更に加圧して搾り増しします。この時搾れる部分を「責め」と呼びます。


●「あらばしり」は、言わば 一番煎じ。 醪の上澄みの部分なので、雑味が少なく味わいクリア、香りも高くて 素晴らしく美味しいが、そんなに多くは採れない稀少部位です。

●「中取り」は、圧を掛けて搾るので 米粒の中から旨味果汁が垂れてくるイメージ。
「あらばしり」が“美味しい”のに対して、「中取り」は“旨い”という印象で、いちばん味わいバランスがいい部分だと感じます。

●「責め」は 搾り増しの部分で お茶で言えば「出涸らし」、あまり良いイメージを伴わない部分ですが、飲みごたえや 旨味が凝縮されたような味わいで、お酒の味のうち 大事な骨格を構成する不可欠な部分だと考えます。

なお通常 搾る時は「あらばしり」「中取り」「責め」と それぞれの部分を 切り分けたりはせず、最初から最後までを 1本のタンクに搾り受けるので すべての味が混成されたバランスいいお酒になるのです。

かし、このお酒「斗瓶囲い」は、大吟醸を搾る時、特に香味の良い部分だけを別に採った特別なお酒です。

一般的な酒蔵では、「あらばしり」が搾れてきた順に18ℓずつ 斗瓶に採ります。
仕込みの規模にもよりますが、10本ほども採れるんでしょうかね。18ℓ×10本ということは180ℓ採れる計算ですね。
順に1番、2番…10番と名付け、後日 斗瓶ごとに利き酒、評価します。

例えば、
1番は にごりが多くて味が良くない。90点。
2番は 澄んでるが 味わいが纏まらない。90点
3番は 香り高くて 味わいクリア。95点
4番は 味のバランスよく旨味最高。99点
…って感じに。

で、ならば 味のいい4番をベースにして、香りいい3番を20%くらいの割合で調合して…みたいにして最高の1本を仕上げます。
この最高の1本は、一般的には鑑評会出品酒になります。いわゆる「全国新酒鑑評会 金賞受賞」とかいう、あれ用のお酒です。

て、この際、出品酒にはなれなかった1番や2番の斗瓶ですが、そうは言っても 充分に美味しい部分。
これらが、一般的に市販される「出品酒」や「斗瓶囲い」になる部分なのです。

尤も 私の場合、一般的な蔵元さんとは少し考え方が異なり、「最高の1本とやらが出来たなら、それはお客さんにこそ飲んでもらいたい」と考えるのです。
だからもう長らく鑑評会には出品していません。


「一般的な酒蔵では」と断りましたが、
それではビワチョウは、一般的な酒蔵とどう違うのか。

ワチョウの特徴は超小仕込み
一回の搾りで採れるお酒の総量はせいぜい400~500ℓ
しかもそのうち斗瓶囲い用に採れる「いいとこ」は、多くても10%ほど。

まり、1本の仕込みから 斗瓶囲い用のお酒は 40ℓ ほどしか得られないのです。
これを18ℓの斗瓶に採ったら たった2本、そうなると上述のように、
「4番をベースに、3番を調合」どころの話じゃなくなってくるのですよ。

そう、一般的な酒蔵で 小分け用として使われる斗瓶でさえも、超小仕込みのビワチョウにとっては、全然 小分けじゃない。まだまだ大きすぎる。何時かの年には、斗瓶(18ℓ)より、さらに小さい 1升瓶(1.8ℓ)で採った事もありましたが、これはこれで 後々の滓引き(清澄濾過)工程を考えると、扱いが悪い。さんざん悩んだ挙句たどり着いた方法とは。。。

リアルタイムで常時利き酒しながら、
採るか 否かを、その場で判断して、瞬時に切り分ける方法です。
つまり、後日やる利き酒・評価を、お酒を搾る その時 その場で、一発勝負で決めていきます。



酒を搾る時、醪を搾り袋に詰め 手早く 槽(ふね)に積み重ねていきます。
ここまでは普通の搾りと一緒。

この後 私は 素早く垂れ口のそばに陣取ります。垂れ口(たれくち)とは、文字通り、搾られたお酒が流れ出てくる槽の出口部分、ここの前にコンテナ箱をひっくり返した簡易な椅子を置き、そこに座ります。目の前には 垂れ口から トロトロ流れ出るお酒。
これを20~30秒おきにグラスに汲んで 利き酒します。

実は搾れて出てくるお酒は、とても頻繁に味が変わります。
実に 20秒前と 20秒後では 味が別物、、、と言うほど頻繁にです。

「あ。いま すごく香りいい部分が出てるから、ここは採っとこう」とか、
「あ。このへん 酸味キツくてイヤや。ここは採らんとこう」とか、
「あ。いま味澄んでる。ここ採ろう」とか、
「あ。少し味の輪郭ぼやけてきた、採らんとこう」とか。


こういった味の変遷が、実に20~30秒のうちに 目まぐるしく起こるのです。
だから 私はと言うと、20~30秒おきに グラスに少しお酒を汲んでは 利き酒する。
そんな作業を2~3時間もやり続けるのです。

いい仕事?うらやましい?
とんでもない。


お酒を飲み込まない(利き酒する場合、口に含んだお酒は香味だけ確かめて飲み込まずに吐き出します)とはいえ、口に含むからには多少嚥下するし、口腔粘膜からもアルコールは吸収されるから だんだん酔ってくる。しかし休んでる暇はない、20~30秒おきに利き酒して お酒を評価し、採るか否かを瞬時に判断する。眉間にしわ寄せてする利き酒は神経擦り減るし およそ美味しい楽しいなんて作業じゃない

わば
「3時間耐久 利き酒マラソン」
まさにそんな作業。間に他の物を飲食することは出来ない。味覚基準が変わってしまうから。なんせこのお酒は、ビワチョウの最高峰「琵琶の長寿 大吟醸 斗瓶囲い」になるお酒なんだ。美味しくないじゃ済まされない。

談ですけど、お酒を「飲む」のではなくて「利き酒」をする、これはほんとに疲れる作業。ぐったり帰宅して「(×_×;)あー疲れた」って言いながら、こんな疲れた日にこそ いつにも増して 晩酌が美味しいと感じる。「お酒の疲れを お酒で癒す」みたいなね。ほんとお酒が好きなんですおれ(ˊωˋ*)。

うして採る「斗瓶囲い」ですが、先述のとおり、1回の搾りで40ℓも採れたら上出来。
10ℓそこそこしか採れないことや、後日 利き直した結果どうしても納得いかず、結局 製品化を見送った年も。お酒は好き嫌いある嗜好品とは言え、1.8ℓで\15,000-を越えるお酒、飲んでもらって美味しくない言われたら大問題です。

ここまでの 心意気で造っているお酒「琵琶の長寿 大吟醸 斗瓶囲い」なので、\15,000-はコスパ最強のお酒だと、私は思っています。


●要点まとめ●
・斗瓶とは 18ℓ入る 大容量瓶のこと。
・(一般的には)搾れ初めの「あらばしり」を斗瓶に小分け採りし、更にその中から優れた部分を選別・調合して最高の1本を造る→鑑評会用。
・(一般的には)最高の1本に成れなかった部分でさえも充分美味しいので、→市販向け「斗瓶囲い」用に。
・ビワチョウは超小仕込みゆえ そもそも搾れる量が少なく、その中で「あらばしり」は更に少ないので、斗瓶でさえも大き過ぎる。
・もはや斗瓶には採らず、垂れ口のそばで、採るか否かを即時判断。
・ところで、「あらばしり」は頻繁に味が変わる。
・20~30秒ごとに 2~3時間 利き酒を続け、特に美味しい部分のみを別採りした部分が「琵琶の長寿 大吟醸 斗瓶囲い」である。
・ビワチョウ杜氏は、お酒の疲れも お酒で癒す。


以上です。

















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